おひとりさまの終活準備。不安を安心に変えるために私がやったこと
「もし私に何かあったら…」尽きない不安
定年退職を迎え、少し時間にゆとりができた頃から、漠然とした将来への不安を感じるようになりました。私は結婚しておらず、兄弟もいません。両親は既に他界し、甥や姪とは疎遠になっています。頼れる身近な家族がいない、いわゆる「おひとりさま」です。
一番の心配は、もし自分が病気で倒れたり、認知症になったりしたら、誰が医療や介護の手続きをしてくれるのだろうか、ということでした。そして、亡くなった後の葬儀やお墓、部屋の片付け、様々な解約手続きは一体誰が…? 考えるほどに、不安は募るばかりでした。
「誰にも迷惑はかけたくない。でも、何もしなければ、結局誰かに負担をかけてしまうかもしれない…。」
そう思い至り、「自分のことは自分で備えよう」と、終活について真剣に情報収集を始めました。
情報収集と専門家への相談
まずは、本やインターネットで終活に関する情報を集めました。エンディングノートの存在を知り、基本的な情報を書き出すことから始めました。しかし、おひとりさまの場合、医療の同意や財産管理、死後の手続きなど、ノートに書くだけでは解決しない、法的な準備が必要なことが多いと分かりました。
そこで、地域の終活セミナーに参加したり、いくつかの専門家(司法書士、行政書士、NPO法人など)に初回相談をしたりして、自分に必要な準備は何か、誰に何を頼めるのかを具体的に検討していきました。
具体的な準備:① 医療・介護への備え
まず取り組んだのは、判断能力があるうちに、医療や介護に関する意思を決めておくことでした。
- リビングウィル(事前指示書)の作成:延命治療に関する希望などを具体的に文書にしました。エンディングノートにも記載しましたが、別途、意思表示書としても作成しました。→ 医療・介護の意思表示
- 任意後見契約:もし認知症などで判断能力が低下した場合に備え、信頼できる司法書士の方と「任意後見契約」を結びました。これにより、将来、私の代わりに財産管理や身上監護(介護契約など)を行ってもらえるようになります。友人や遠縁の親戚に頼むことも考えましたが、負担をかけたくない気持ちと、専門家の方が確実だという思いから、専門職後見人を選びました。
具体的な準備:② 財産管理と死後の手続き
次に、自分の財産をどうするか、そして亡くなった後の手続きを誰に託すかを考えました。
- 財産目録の作成:預貯金、わずかな有価証券、保険などをリスト化し、エンディングノートに情報をまとめました。→ お金と財産の整理
- 遺言書の作成:財産は多くありませんが、誰に何を遺したいか(疎遠な甥姪と、お世話になった友人、支援したいNPO法人など)を明確にするため、「公正証書遺言」を作成しました。任意後見をお願いした司法書士の方に、遺言執行者にもなってもらうよう指定しました。→ 遺言書について
- 死後事務委任契約:葬儀・納骨の手配、役所への届け出、家賃や公共料金の精算、部屋の片付け、デジタル遺品の整理など、死後に必要となる様々な手続きを、生前に信頼できる第三者(私の場合、身元保証も提供しているNPO法人にしました)に委任する契約を結びました。これにより、死後の手続きに関する不安が大きく解消されました。
具体的な準備:③ 身元保証
入院や施設入居の際に必要となることが多い身元保証人も、私には頼める人がいませんでした。これも死後事務委任契約を結んだNPO法人が提供している「身元保証サービス」を利用することにしました。費用はかかりますが、これで入院・入居時の心配もなくなりました。
不安が「安心」に変わった今
これらの準備には、正直、時間も手間も、そして費用もかかりました。何度も悩み、専門家と相談を重ねました。しかし、一つ一つ準備を進めるうちに、漠然としていた将来への不安が、具体的な「備え」に変わり、大きな安心感を得ることができました。
「やるべきことをやった、という自信が、今の私を支えてくれています。これで心置きなく、これからの人生を楽しめる、と前向きな気持ちになれました。」
エンディングノートは、これらの契約内容や連絡先、私の想いをまとめた、まさに私の終活の「羅針盤」として、今も時々見直し、書き加えています。
おひとりさまの終活を考えている方へ
おひとりの方は、ご自身の終活をご自身で計画し、実行していく必要があります。「誰に頼ればいいの?」という不安が大きいと思いますが、今は様々な制度やサービスがあります。
大切なのは、「自分ごと」として早めに関心を持ち、情報を集め、行動に移すことだと思います。そして、必要であれば専門家の力を上手に借りることです。費用はかかっても、それによって得られる安心感は計り知れません。
準備をすることで、きっと、今をもっと安心して、自由に生きられるようになるはずです。応援しています。
※ この体験談は、個人の経験に基づいたものであり、すべての方に当てはまるものではありません。必要な準備や利用すべき制度・サービスは個々の状況によって異なります。必ずご自身の状況に合わせてご検討いただき、必要に応じて専門家にご相談ください。