行政書士について(終活・相続)
「身近な街の法律家」とも言われる行政書士は、官公署への提出書類や
権利義務・事実証明に関する書類作成の専門家です。
終活・相続分野で行政書士ができること、できないことを理解しておきましょう。
行政書士の主な役割と得意分野(終活・相続関連)
行政書士は、役所に提出する書類や、私人間の契約書・合意書などの作成を主に行います。終活・相続分野では、紛争性のない(争いになっていない)ケースにおいて、以下のような業務を依頼できます。
- 遺産分割協議書の作成:相続人間で円満に合意が成立した後の、協議内容をまとめた書類作成。
- 相続関係説明図(家系図)の作成:戸籍謄本等に基づき、相続関係を分かりやすく図式化。
- 戸籍謄本等の収集代行:相続人調査に必要な戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本などの取得代行。
- 遺言書作成の支援:自筆証書遺言の起案や、内容に関する一般的なアドバイス。(※ただし、法的な有効性や紛争リスクに関する高度な判断は弁護士の領域です)
- 自動車の名義変更手続き(移転登録):運輸支局等への申請書類作成・提出代行。
- 各種許認可の承継手続き:故人が営んでいた事業(建設業、飲食店など)に関する許認可の承継(相続)手続き。
- 内容証明郵便の作成:事実通知や意思表示のための書類作成。
行政書士の強み:書類作成と行政手続き
行政書士は、1万種類を超えると言われる官公署への申請書類作成や、権利義務・事実証明に関する書類作成のプロフェッショナルです。争いのないケースにおける遺産分割協議書や各種契約書の作成、許認可手続きなどでその専門性を発揮します。
【重要】行政書士にはできないこと(業務範囲の制限)
行政書士法により、行政書士が行える業務には制限があります。以下の業務は原則として行政書士は行えません。
- 紛争性のある法律事務:相続人間の交渉代理、遺産分割調停・審判の代理、遺留分侵害額請求の交渉・訴訟代理など、争いになっている事件への介入や代理行為。(→ 弁護士の業務)
- 登記申請の代理:不動産登記(相続登記)や会社登記の申請代理。(→ 司法書士の業務)
- 税務相談・税務申告:相続税の計算、申告書の作成、税務相談。(→ 税理士の業務)
- 具体的な法律判断・鑑定:紛争性のある事案における法的な見解を示すこと。
もし相続人間で揉めている場合や、登記・税務申告が必要な場合は、それぞれ弁護士、司法書士、税理士に相談する必要があります。行政書士の中には、他の士業と連携している事務所もあります。
行政書士に相談できるケース(注意点あり)
上記の業務範囲を踏まえ、以下のような場合に相談を検討できます。
- 相続人全員で話し合いが円満にまとまり、遺産分割協議書を作成してほしい。(※争いがないことが大前提)
- 相続手続きに必要な戸籍謄本等の収集や、相続関係説明図の作成を依頼したい。
- 自動車を相続したので、名義変更手続きをお願いしたい。
- 自筆証書遺言を作成したいので、一般的な書き方のアドバイスや文案作成のサポートが欲しい。(※複雑な内容や法的な有効性の保証を求める場合は弁護士・司法書士へ)
- 相続した事業の許認可の承継手続きが必要。
「これは行政書士に頼める業務か?」と迷った場合は、まず相談してみて、対応できない業務であれば他の適切な専門家を紹介してもらうことも可能です。
行政書士の探し方
相続関連の書類作成に慣れている行政書士を探す方法は以下の通りです。
- 1. 行政書士会の紹介
- 日本行政書士会連合会や、各都道府県の行政書士会に問い合わせると、地域や業務内容に応じて行政書士を紹介してもらえる場合があります。無料相談会が開催されていることもあります。
- 2. インターネットで検索する
- 「行政書士 相続 (地域名)」や「遺産分割協議書作成 行政書士」などのキーワードで検索します。ウェブサイトで相続関連業務の実績や得意分野を確認しましょう。
- 3. 他の専門家からの紹介
- 弁護士や司法書士、税理士などが、書類作成部分を行政書士に依頼・紹介することがあります。
- 4. 市区町村の相談窓口など
- 地域の無料法律相談などで、行政書士が相談員となっている場合があります。
- 5. 知人からの紹介
- 実際に依頼したことのある知人からの紹介も参考になります。
行政書士選びのポイント
専門家選び方ガイドも参考に、以下の点を特に確認しましょう。
- 相続関連書類の作成経験:遺産分割協議書や相続関係説明図などの作成実績が豊富か。
- 説明の丁寧さ・分かりやすさ:手続きや書類の内容について、分かりやすく説明してくれるか。
- 費用体系の明確さ:書類作成ごと、手続きごとの報酬が明確に提示されているか。事前に見積もりを出してくれるか。
- 業務範囲の理解と連携:自身の業務範囲(できないこと)をきちんと説明し、必要に応じて他の専門家(弁護士・司法書士・税理士)を紹介してくれるか。(※非常に重要)
- コミュニケーション・相性:信頼して任せられると感じるか。
行政書士費用について
行政書士の報酬は、依頼する書類作成や手続きの種類によって、個別に定められていることが多いです。一般的に、紛争解決を伴わない書類作成が中心のため、弁護士や司法書士と比較すると費用は抑えられる傾向にあります。
- 遺産分割協議書作成:数万円程度~
- 相続関係説明図作成:数万円程度~
- 戸籍謄本等収集代行:数万円程度~(取得する戸籍の数による)+実費
- 自動車名義変更:数万円程度+実費
- 相談料:初回無料や、1時間あたり〇〇円(例:5,000円程度~)など事務所による。
必ず事前に見積もりを確認
依頼したい業務内容を伝え、必ず事前に報酬額の見積もりを書面で提示してもらい、内容に納得した上で依頼しましょう。
書類作成は行政書士も選択肢に
争いのないケースでの遺産分割協議書作成や戸籍収集など、
特定の書類作成や行政手続きにおいては、行政書士が頼りになる存在です。
ただし、業務範囲には制限があることを理解し、必要に応じて他の専門家とも連携しましょう。