終活・相続の羅針盤

デジタル終活について

パソコン、スマートフォン、インターネットサービスの普及に伴い、
私たちの情報や資産はデジタル空間にも広がっています。
これらの「デジタル遺品」を整理する「デジタル終活」は、現代の終活に不可欠です。

デジタル終活とは？ なぜ必要？

デジタル終活とは、ご自身が亡くなったり、意思表示ができなくなったりした場合に備えて、パソコンやスマホ内のデータ、インターネット上のアカウント情報、デジタル資産などを整理しておくことです。

デジタル終活が必要な理由

  • 家族の負担軽減：死後、家族が大量のデジタル情報の中から必要なものを見つけ出し、各種手続き（アカウント削除、解約など）を行うのは大変な負担です。
  • デジタル資産の保護・承継：ネットバンクの預金、電子マネー、暗号資産などが誰にも知られずに失われてしまう（＝「デジタル遺産相続」の失敗）のを防ぎます。
  • 個人情報・プライバシーの保護：第三者による不正アクセスや、見られたくない情報が残ってしまうリスクを減らします。SNSアカウントの管理方針も明確にできます。
  • 不要な費用の防止：利用していないサブスクリプションサービスなどの料金が、死後も引き落とされ続けるのを防ぎます。
  • セキュリティリスクの低減：放置されたアカウントが悪用されるリスクを減らします。

物理的な持ち物と同様に、デジタル情報も元気なうちに整理しておくことが重要です。

デジタル終活の対象となる主なもの

以下のようなデジタルデータやサービスが対象となります。

  • 端末内のデータ 写真、動画、音楽、文書ファイル、アドレス帳、メールデータ (PC, スマホ, タブレット, 外付けHDDなど)
  • メールアカウント Gmail, Yahoo!メール, Outlookメール, プロバイダメールなど
  • SNSアカウント LINE, Facebook, X(Twitter), Instagram, TikTokなど
  • クラウドストレージ iCloud, Google Drive, Dropbox, OneDriveなど
  • 金融関連サービス ネットバンキング, オンライン証券, FX口座, 暗号資産(仮想通貨)取引所など
  • オンラインショッピング Amazon, 楽天市場などのアカウント、登録済み決済情報、保有ポイント
  • 電子マネー・決済アプリ Suica/PASMO(オンライン連携), PayPay, LINE Payなど
  • サブスクリプション 動画配信(Netflix等), 音楽配信(Spotify等), ソフトウェアライセンスなど
  • ブログ・ウェブサイト 自身で運営しているブログやサイト、サーバー契約
  • その他 ゲームアカウント、マイル・ポイントプログラム、各種オンラインサービス

デジタル終活の進め方 5ステップ

  1. デジタル資産・アカウントのリストアップ

    利用しているサービス名、ID（ユーザー名やメールアドレス）、サービスの目的などをリスト化します。パスワードそのものはリストに記載しないようにしましょう。

    • 金融資産関連は特に重要です。
    • 普段使っていないサービスも洗い出します。
  2. データ・アカウントの要否判断と整理

    リストを基に、各アカウントやデータを「残す」「削除する」「誰かに引き継ぐ」に分類します。不要なアカウントはその場で解約・退会しましょう。端末内の不要なデータも削除します。

    • 重要なデータ（写真など）はバックアップを取ります。
  3. 死後の取り扱い方針の決定

    「残す」と判断したアカウント（特にSNSなど）について、死後にどうしてほしいか（アカウント削除、追悼アカウントへの移行など）方針を決めます。サービスによっては事前設定が可能な場合もあります（例: Google「アカウント無効化管理ツール」、Facebook「追悼アカウント管理人」）。

  4. ID・パスワード情報の管理と伝達方法の準備

    【最重要・要注意】ログイン情報を安全に管理し、死後に信頼できる人にだけ伝わる方法を準備します。安易な方法（メールで送る、メモをそのまま渡す等）は危険です。

    • 方法例1：パスワード管理ツールの活用: 安全性の高いツールで一元管理し、マスターパスワードの継承方法を別途安全に準備（エンディングノートに「〇〇（ツール名）のマスターパスワードは△△に保管」と記すなど）。
    • 方法例2：エンディングノート等への記載: アカウントリストと、パスワードを記録した「別のノート」や「ファイル」の『保管場所』をエンディングノートに記す。パスワード自体は書かない。
    • 方法例3：信頼できる人に託す: デジタルに詳しい信頼できる人に、アクセス情報の保管場所や手順を生前に伝えておく（ただし、その人の負担も考慮）。
  5. エンディングノート等への記録と共有

    作成したアカウントリスト、各アカウントの死後の方針、そして「ID・パスワード情報へのアクセス方法（保管場所など）」をエンディングノート等に記録します。そのノートの存在と保管場所を、信頼できる家族などに伝えておきましょう。

    → エンディングノートについて

【！】ID・パスワード管理の注意点

IDとパスワードは、あなたのデジタル資産とプライバシーを守るための「鍵」です。その管理と伝達方法の準備は、デジタル終活において最も重要かつ慎重に行うべき点です。

  • パスワードそのものを安易に書き残さない、人に教えない。
  • エンディングノートには、パスワードそのものではなく、パスワード情報へのアクセス方法（保管場所など）を記述する。
  • パスワード管理ツールを利用する場合、マスターパスワードの管理・伝達方法を厳重に検討する。
  • 二要素認証（2FA）を設定しているアカウントは、死後のアクセスが困難になる可能性があるため、解除方法やリカバリーコードの管理も考慮する。

セキュリティを最優先に、ご自身と信頼できる人にとって最も安全で現実的な方法を選びましょう。

専門サービスについて

近年、デジタル終活を支援する専門サービス（デジタル遺品整理、死後のアカウント削除代行など）も登場しています。利用を検討する場合は、サービス内容、費用、信頼性を十分に確認することが重要です。

デジタル情報も大切な資産です

デジタル終活は、少し面倒に感じるかもしれませんが、後回しにせず元気なうちに取り組むことが大切です。
まずは、普段使っているサービスをリストアップすることから始めてみましょう。

終活やることリストを見る 終活の羅針盤トップへ