終活・相続の羅針盤

相続税がかかるのはどんな時? ~基礎控除を知る~

相続税は、亡くなった方(被相続人)から受け継いだ財産の総額(借金などを差し引いた正味の遺産額)が、一定の金額を超える場合にのみ課税されます。この一定の金額を「基礎控除額(きそこうじょがく)」といいます。

相続税の基礎控除額 計算式

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

遺産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、原則として申告も不要です。


【計算例】

・法定相続人が配偶者と子2人(合計3人)の場合:
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

・法定相続人が子3人のみ(合計3人)の場合:
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

・法定相続人が配偶者のみ(合計1人)の場合:
3,000万円 + (600万円 × 1人) = 3,600万円

※法定相続人の数には、相続放棄した人も含めて計算します。養子の数は、実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで含めることができます。

→ 法定相続人について詳しく

まずは、相続財産の総額が基礎控除額を超えるかどうかを確認することが、相続税を考える第一歩です。

→ 相続財産の調査・評価について

相続税の計算方法(概略)

相続税の計算は複雑ですが、大まかな流れは以下のようになります。

  1. 各人の課税価格を計算する

    プラスの財産(みなし相続財産含む)から、借金などのマイナス財産と葬式費用を差し引き、「正味の遺産額」を計算します。これに、相続開始前一定期間内(※)の生前贈与財産を加算して、「課税価格の合計額」を算出します。

    ※2024年1月1日以降の贈与から、相続財産への加算期間が死亡前3年から7年へ段階的に延長されています。

  2. 相続税の総額を計算する

    課税価格の合計額から基礎控除額を引いた「課税遺産総額」を、一旦、法定相続分で分けたものとして各相続人の取得額を計算し、それぞれの取得額に相続税の税率(累進課税)を掛けて税額を算出します。それらを合計したものが「相続税の総額」となります。

    ※実際の遺産の分け方ではなく、法定相続分で按分して計算するのがポイントです。

  3. 各人の納付税額を計算する

    算出した「相続税の総額」を、実際に財産を取得した割合に応じて各相続人に割り振ります。これが各人の基本的な納税額となります。

  4. 税額控除を適用する

    各人の納税額から、適用できる税額控除を差し引きます。主な控除には以下のようなものがあります。

    • 配偶者の税額軽減:配偶者が取得した遺産額が「1億6千万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額まで、相続税がかからない制度です。(非常に大きな控除です)
    • 未成年者控除
    • 障害者控除
    • 相次相続控除(10年以内に続けて相続があった場合)
    • 贈与税額控除(相続財産に加算された贈与財産にかかる贈与税)

    控除を適用した後の金額が、最終的な各人の納付税額となります。

計算は複雑!専門家への相談を推奨

上記はあくまで基本的な流れです。財産の評価方法、特例の適用、税額控除の条件など、実際の計算は非常に複雑です。基礎控除額を超える可能性がある場合は、必ず税理士に相談し、正確な計算と申告を依頼することをお勧めします。

国税庁:相続税のあらまし(外部リンク)

【重要】申告と納税の期限:10ヶ月以内!

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。

  • 申告が必要なのは、遺産の総額が基礎控除額を超える場合です。(税額控除によって最終的な納税額がゼロになる場合でも、申告は必要です)
  • 申告書は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。
  • 納税は、原則として現金一括納付です。(延納や物納の制度もありますが、条件が厳しいです)

10ヶ月という期間は意外と短く、財産調査、評価、遺産分割協議、申告書の作成など、やるべきことは多岐にわたります。早めに準備を開始することが肝心です。

相続税対策の基本(概要)

相続税の負担を軽減するためには、生前から計画的に対策を行うことが有効です。主な対策の考え方には以下のようなものがあります。

  • 生前贈与を活用する:暦年贈与(年間110万円まで非課税)や相続時精算課税制度などを利用して、生前に財産を移転する。(※近年の税制改正でルールが変更されている点に注意が必要です)
  • 生命保険金の非課税枠を活用する:死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税枠があります。
  • 不動産評価の特例を活用する:居住用や事業用の宅地について評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」などがあります。(適用要件は複雑です)
  • 養子縁組をする:法定相続人の数を増やすことで、基礎控除額や生命保険の非課税枠を増やすことができます。(ただし、税法上の算入数には制限があります)
  • おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)を活用する:婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金の贈与があった場合に、最高2,000万円まで控除できる制度です。

これらの対策は、個々の状況や最新の税制に合わせて検討する必要があります。

具体的な対策については、こちらのページで詳しく解説しています。
→ 相続税の具体的な対策について

相続税のことは税理士に相談

相続税は、日本の税金の中でも特に専門性が高く、複雑な制度です。

  • 遺産総額が基礎控除を超えそうな場合
  • 財産の評価が難しい場合(不動産、非上場株式など)
  • 相続税の特例や控除を適用したい場合
  • 生前の相続税対策(節税)を考えたい場合
  • 相続税申告書の作成・提出を依頼したい場合

上記のような場合は、相続税に詳しい税理士に相談することを強くお勧めします。適切なアドバイスとサポートを受けることで、スムーズな申告と、場合によっては納税額の軽減につながります。

→ 専門家を探す・選び方

まずは基礎控除の確認から

相続税について考える最初のステップは、ご自身のケースで基礎控除額を超えそうかを確認することです。
超える可能性がある場合は、早めに財産評価や税額の試算を行い、必要であれば専門家への相談を検討しましょう。

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